ホーム > 商品・サービス情報 > 製造業ソリューション > TPiCS-X > TPiCSのf-MRPのリードタイム設定について
今後、TPiCSで使われている各種用語を一般的な書籍などの意味付けと対比させて考えてみたいと思います。
まずは、一番重要な考え方である「リードタイム」です。
TPiCSでは、これに関連するパラメータが、
(1) 製造リード日数
(2) 納入リード日数
(3) 固定期間
(4) 伝票発行期間
基本的に4つあります。まずこれらの動きを検証してから用語集などの概念とすり合わせましょう。
製品A は上記の(1)~(4)が全て0 です。これをTPiCS の生産計画表で見ると以下の様になります。直下の製品B と比べると灰色の部分が本日(8/5)になっています。

ここで、TPiCS の伝票発行(製造指図、発注に関係します)の動きを見てみましょう。上記の製品A の「伝票発行期間」は0、製品B は1 です。製品B の8/5 の水色部分は伝票発行済みの期間で、既に前日以前に、製造手配がされている場合にはここに数字が入り、生産計画表に対応する注文が存在します。今回は手配した注残はありません。

8/8 の製品A に数量10 の生産計画が入りました。この状態で伝票発行(丸で示した伝票ボタンを押して作成)します。オーダー数は0 件になります。

8/5 の製品A に数量10 を移動します。伝票発行します。


今度は、1 件の伝票(指図)が作成されました。
伝票データを見てみましょう。

製品A の伝票データが作成されています。このデータを製造指図書として印刷して、その後「確定」処理をすることで注残となります。

水色の領域が広がったのは、本日確定処理日付だが未処理(灰色)」が「確定処理済(水色)」に変わったと言う事です。
さて、伝票発行期間は本当に伝票発行期間なのかを見てみましょう(脱線です)。

製品B に本日(8/5)から、稼働日ベースで(赤色は休日、2005 年では土日が休み)8/19 まで、数量1 を入力します。これを伝票発行するとどうなるのでしょう?

予想通り、2 件の伝票データが出ます。上の赤枠内です。

どうも「伝票発行期間」とは、今日から数えて何日先の伝票(指図)を発行するかを指定しているようです。
製品A は、本日+伝票発行期間(0)=本日
製品B は、本日+伝票発行期間(1)=次の稼働日
また、何日先の何を決めるのかは上記伝票データに記入されているように「(完成)納期」を決めています。これは、材料や部品の「購買リードタイム」に該当する考え方のように思います。(製造リードタイムの考え方にも近いです)
さて、それでは、この「伝票発行期間」にマイナス値(-1)を入れるとどうなるでしょう。

製品Aはこの状況で「いつまでも手配できない状態」です。普段使用されることはありませんが、この設定を利用した事があります。(スケジューラとの連携についての当社HPをご参照ください)
さて、次に「固定期間」について調べてみましょう。まず、固定期間とは何でしょう?
処理をする 本日 から、何日先まで計画を固定するかをインプットします。
f-MRP では、必要計画が変更(増産)されても、バッファの在庫(基準在庫-最小在庫)を自動的に引当てすることで、固定レベルで設定した値に拘わらず、固定期間内の計画はできるだけ変えないように所要量計算を行います。通常は、固定期間には伝票発行期間と同じ値を設定します。固定期間に伝票発行期間と異なる値を設定するのは、次のような特殊なケースです。・・・(TPiCS マニュアルより)
「伝票発行期間」と比べてみましょう。
処理をする 本日 から、何日先までの計画(注文)の伝票を発行しなければならないかをインプットします。発注手番や発注リードタイムと呼ばれることもあります。(TPiCS マニュアルより)
まず、よく判らない言葉なのでやってみましょう。

中間品A1 について、「伝票発行期間」を1、「固定期間」を2 にすると上のような表示になりました。8/8の色と8/9 の色が微妙に違う事が判ります。(あえてA1 にしたのは、親品目A に対する従属需要での振る舞いを見ていただくためです。
製品A が固定レベル1 なので、製品A を独立需要として計画展開できます。

固定レベルを2 にすると従属需要として認識するので所要量計算をすると、先程の8/16 の計画数10 がクリアされます。(TPiCS では固定されたアイテムの生計行は緑色になります。)

(8/16を変更したところ)

(所要量計算後全てがクリアされる)
さて、この状態で製品A の固定レベルを1(独立需要)に戻し、8/5 から8/19 まで毎日数量1ずつ入力し、子アイテムA1 の所要量計算がどうなるかを見てみましょう。

ここで、「固定期間」「伝票発行期間」のTPiCS の仕様が出てきます。これを良く押さえて運用を考える必要がありそうです。

上記が結果です。アイテムA1 の8/8 が0 です。ジャーナルの該当する部分を見ると、
今回の所要量計算で、手配や指示がもう間に合わない物 05/08/08 10:08 (05/08/05)
S1 A1 中間品A1 050808 0 -> 1 固定済期間の計画変更が必要になりました。
「在庫不足でも計画を変更しない」設定になっているので、自分で修正してください。
ここで、「伝票発行期間」内は「確定オーダー」、「伝票発効日」から「固定期間」内は「確定予定オーダー」として考えるとわかりやすいように思います。
これを検証するために「固定期間」と「伝票発行期間」のパラメーTPiCSみましょう。以下では、固定期間を2 から3 に変えました。(データ管理の発行済・固定済期間を再セットしています)

結果は以下の通りです。

ジャーナルは以下の通りです。
今回の所要量計算で、手配や指示がもう間に合わない物 05/08/08 10:29 (05/08/05)
S1 A1 中間品A1 050808 0 -> 1 固定済期間の計画変更が必要になりました。 「在庫不足でも計画を変更しない」設定になっているので、自分で修正してください。
S1 A1 中間品A1 050809 0 -> 1 固定済期間の計画変更が必要になりました。 「在庫不足でも計画を変更しない」設定になっているので、自分で修正してください。
予想通りですね。ここで注意しないといけないのは、現在は当日の伝票発行処理や確定処理をする前であることに注意が必要です。すなわち、8/8(暗灰色バケット)の伝票未発行の部分と、8/10(明灰色のバケット)の(当日計画)未固定期間の処理がすんでいない段階での所要量計算の振る舞いだということです。
ですので、8/10 は未固定状況ですのでこの数字が親アイテムの需要数に合わせて変化します。

ちなみに当月計画数を見てみると、A1 が上記のジャーナルを出して計画変更しない分数量が減っているのがわかります。
伝票発行して確定すると以下の表示になります。計画固定されている部分の色が変わります。

ここで、所要量計算するとどうなるでしょう?

先程はじいた8/8 に計画データ(数量1)が入っています。
ジャーナルはどうなっているでしょう?
今回の所要量計算で、手配や指示がもう間に合わない物 05/08/08 10:48 (05/08/05)
S1 A1 中間品A1 050809 0 -> 1 固定済期間の計画変更が必要になりました。 「在庫不足でも計画を変更しない」設定になっているので、自分で修正してください。
S1 A1 中間品A1
必要日:050808 対応可能日:050809 0 -> 1
8/9 は固定済のメッセージですが、8/8 はメッセージの内容がシンプルになりました。このうち、8/8 の動きは、既に伝票発行済み(確定オーダー)期間に追加オーダー(特急注文)が入った事を意味しておりTPiCSは(待ったなし?)で計画表に追記した事を示しています。
このように、TPiCS の「伝票発行」、「伝票確定処理」をする前後で状況が変わる事も確認してください。
これらの動きを考えると、TPiCS のロジックでは、「確定予定オーダー」の考え方が希薄なことが判ります。
「f-MRP」の場合この「確定予定オーダー」の部分を極力排除する事で計画変更の柔軟性を高めようとする(「固定期間」-「伝票発行期間」の差のリードタイムを稼ぐ)考え方が伺えます。(注:「確定オーダー」、「確定予定オーダー」の考え方など一般的な用語として使えるとの判断は、日刊工業出版社刊「MRP 用語500 選」を参考しています。・・・著作権の関係から内容掲載は控えさせていただきます。ご了承ください。)
さて、次に「製造リードタイム」についてですが、TPiCS で該当する「製造リード日数」とは何でしょう?
数量に影響されない、着手から完成までの日数をインプットします。
当日着手・当日完成であれば 0 、前日着手・当日完成であれば 1 とインプットします。
所要量計算の中で、子 がある時には製造リード日数分繰り上げて、子の引計を作ります。
子のないアイテムの場合は何の意味も持ちません。デフォルト 0 のままにして下さい。
(マニュアルより)
まず、TPiCS の特性として、「全ての工程をアイテム(品目)レベルで構成する事」が上げられます。たとえば、生産管理システムの製品構成を組む場合、以下の様に品目名を決めておき、その下に工程という形で実作業がぶら下がるという組み方をする事があります。(より一般的でしょうか?)

これに対して、TPiCS では全てを上図の品目(アイテム)レベルで定義します。
すなわちこうなります。

上図を追うと、最終検査品目(A)の実績入力で最終製品(A)が完成するという考え方です。その前段階の各作業には同一コードを持てないので、別アイテム(品目)コードを設定します。TPiCS には、工程と言う機能がありますが、今回、この説明は省略します。
さて、製造リードタイムに戻りましょう。

先程の生産計画表に「引計」行が追加されています。これは引落しされる日(バケット)をあらわしています。製品A は「製造リード日数」は1、「納入リード日数」は0 ですが、その他のアイテムはそれぞれ0 に設定してあります。
まず、先程のマニュアルの「子のないアイテムの場合は何の意味も持ちません。デフォルト 0 のままにして下さい。」の表記は、この場合、製品A に該当します。最上位なのでここに「引計」行はありません。
さて、A の子アイテムのA1 は親品目A の「製造リード日数」に影響を受けます。
「当日着手・当日完成であれば 0 、前日着手・当日完成であれば1 とインプットします。所要量計算の中で、子がある時には製造リード日数分繰り上げて、子の引計を作ります。」(マニュアル再掲)
TPiCS では「着手」「完成」を簡単に流していますが「大変奥深い」要件ですので少し詳しく解説します。
本来、MRP 方式で表現できる時間は「バケット」単位です。
ここまで表示して来たTPiCS の生産計画表画面は、一日1 バケット(日バケット)でありこの間で(バケット間)まとめをする事により共通部品(材料)や製造ロットの有効活用をひとつの目的としています。
先程のマニュアルの中にも、さりげない表現ですがこのような表現がありました。「数量に影響されない、着手から完成までの日数をインプットします。」は、バケット単位で更に基本的に無限負荷山積のMRPシステムの限界をあらわしています。着手から完成までは、本来、生産オーダー数によって変化するのですが、これを本システム(MRP)で解決する事は難しいという表現です。という事は、この「着手」「完了」も厳密な意味合いではなく、TPiCS の生産計画上での、引落タイミング(バケット)を規定している呼び名と解釈した方が良さそうです。(現在の小ロット生産では1 日に同じ製品を何回も時間をずらして生産することがあります。その時の着手数は1 ではないという事です)

ちなみに、TPiCS でもシフトを組んでもう少し細かいくくりで計画を管理する事が可能です。(上図、同じ日付が2つ並んでいる事に注意。下図はシフトを加味したカレンダー)

さて、再々度再掲します。
「当日着手・当日完成であれば 0 、前日着手・当日完成であれば1 とインプットします。所要量計算の中で、子がある時には製造リード日数分繰り上げて、子の引計を作ります。」
結論として、生産計画表のバケット単位で、子部品をどのタイミングで引落すと見なすかを規定するのが「製造リード日数」です。「着手」するという事は引落される子部品もラインなどに払出しされ、部品倉庫からは現実的に消えているはずです。その為、TPiCS の所要量計算上は「着手日」に在庫が消費されると計算しているわけです。
ただし、以下の図のように、所要量計算上は「製造リード日数」により着手設定されていても、現実の在庫引き落としは、完成実績(実績インプット)時ですから、「製造リード日数」が長ければ長いほど理論的な引き落とし数と現在庫の誤差が出てくるわけです。(計算通りに作れば帳尻は合うのですが)

あとはマニュアルの内容に合わせて親子間の引き落としを規定します。
言葉を変えると、完成日の何日前に子部品・材料・中間品を完成させるかを規定します。
あるアイテムの完成当日に子部品も完成させる⇒完成日+子部品完成日との差(0)=製造リード日数(0)あるアイテムの完成前日に子部品も完成させる⇒完成日+子部品完成日との差(1)=製造リード日数(1)という事です。
最後が、「納入リードタイム」についてですが、TPiCS で該当する「納入リード日数」とは何でしょう?
納入リード日数
必要時期に対し、どれだけ遡って生産するかをインプットします。
この 納入リード日数 の値は出来るだけ小さくし、むしろ 納入リード日数の余裕(後述)を設定するようにして下さい。
「製造リード日数」と似た定義になってしまいました。どこが違うのでしょうか?それは、「製造リード日数」が子アイテムの引落しを規定しているのに対して、「納入リード日数」は自分の生産計画上の完成日(必要日)から遡ります。
先程の計算結果で部品X は製品A が8/16 に計画が入った事により8/15 に生産計画数が立ちました。ところが、このX は受入検査に1 日必要です。これをTPiCS のマスターではどうすれば良いでしょうか?

まず、部品X の納入リードタイムに1 を入力します。

上図をご覧下さい。部品X の計画日が1 日前倒しされました。計画日が前倒しされました。このような形式で計画完了日(受入日)を明示的にずらしてします方法がひとつあります。ただし、受入検査工程などのリードタイムを規定する場合「納入リード日数」を利用する場合、「納入リード日数」は完成後のリードタイムを規定していることに注意が必要です。
このため、この場合「購買リードタイム」を想定した場合、「伝票発行期間」は、業者が倉庫に納品するまでのリードタイムになり、受入検査期間を「納入リード日数」で表すことになり、「購買リードタイム」=「伝票発行期間」+「納入リード日数」と読み替える事になります。
(ただし、これだけでは不十分で、部品X のアイテムマスターの「デフォルト実績区分」を「M(検査前)」にするなどの対応も必要です。)
次に、「製造リード日数」を使用するとどうなるでしょう?

「製造リード日数」は子部品に対して着手日を規定しますので、生産計画表上は最終完了日(ここでは8/9)に計画が作成されます。
これを、伝票発行します。ここには、「着手予定日」の項目がありますのでこれを利用する方法もありそうです(注文時に、TPiCS の納期をそのまま使わずに着手予定日を利用する)。(下図)

その他に、アイテムを2つ作成する(受入アイテムと検査完了アイテムを作成する)など考えられます。
今回のまとめ
※製造リードタイムをTPiCS であらわすには?
「伝票発行期間」が一般的に製造リードタイムを表します。またその中で「着手」(バケット)を表すのが「製造リード日数」で製TPiCS後工程への輸送期間、また、熱処理後の冷却時間、受入検査時間、入庫処理のための時間的なバッファなど、完成後に、後工程を待たせる事を総称して「納入リード日数」に指定します。
※購買リードタイムをTPiCS であらわすには?
「伝票発行期間」が一般的に購買リードタイムを表します。ただし、受入検査工程などのリードタイムを規定する場合「納入リード日数」を利用できますが記述の読み替えが必要だと思います。
※文中のTPiCSとは、TPiCS-X(正式名称)のことを指します。




