ホーム > 商品・サービス情報 > 製造業ソリューション > TPiCS-X > 現場の指示と平準化の問題
TPiCSのオプションの中で異色のオプションが「着手作業信号機」です。これは単なる実績入力用のオプション(POP端末)のように見えますが、少し違った意味付けがあります。これが、上記のレポートの内容です。
生産管理システムは幾つかの要素(モジュール)が複雑に絡み合って構成されます。このシステムの背後で動く実務の人間関係で考えると、生産計画する側(計画担当者)と実際に製造する現場との関係が最もスリリングであり、また、システム導入検討時には良くボトルネックになる部分です。
生産計画上の「平準化」の問題は、いかに現実的な製造指図ができるかの問題があり、現場側では、計画どおりにならなかった場合にどのように「対処」するのかという問題が絡むわけです。
はじめに、解決しようとした問題そのものを簡単に説明します。
TPiCSに限らず、新しく生産管理のシステムを使うとします。生産管理のシステムを使うということは、その指示に従って部品や材料を発注し、生産するということです。
システムの指示に従って生産する場合、出された指示(計画)の日別の作業量が平準化されていない状況を考えます。例えば、今日は10,000個、明日は100個生産しなさいと言われると、今日は徹夜で仕事をするが、明日は昼過ぎには仕事が無いことになってしまいます。実際にものを作る現場はこれでは困るので、現場から「どうすればいいのだ」と言われてしまいます。
この問題を解決するためには、「平準化された計画を作る」、あるいは「資源(人員能力や設備など)の割付を考慮した計画を作る」ということになります。
しかし、それは非常に難しい仕事です。
- TPiCSには、自動平準化オプションがあるので、ある程度平準化した計画を作ることが出来ます。しかしそれは、完璧なものではありません。(生産管理システムの平準化機能を使用するというもの)
- TPiCSにはスケジューラと連係する機能があります。しかし、実際にはスケジューラの運用もなかなか難しいようです。(MRPでは限界があるので、その部分はスケジューラという詳細な割り当てができるソフトを使用する事)
- 最もベーシックな解決策として、生産計画を人手で平準化します。TPiCSは、計画表の中でもドラッグ&ドロップで計画日を進めたり遅らせたり出来るので、かなり操作性は良くなっていますが、それでも工程が深くなり、さらに共通の工程が有ったりすると大変な作業になります。(手作業で山崩しする事)
- 次の解決策が、前回のレポートの話の「現場にまかせる」です。「現場の裁量で調整してもらう」ために、確定期間を長めにして運用しますが、それによる悪影響も大きなものでした。(大まかな製造計画(指図)にして現場にお任せする・・・納期回答はどうしよう?)
- 最後の解決策も、前回のレポートにありました「システムとは違う計画で生産する」です。システムは部品手配にだけ使い、現場への指示は別の計画でおこないます。前回のレポートのケースはTPiCSの計画対応実績と在庫対応実績の機能を誤用し、おかしな結果になった例でした。(極端な話が伝票発行できれば良いというもの)いずれにしても、解決は難しく生産管理システム運営の現実的なネックでした。
何とか解決する道はないか。簡単なロジックで実用になる方法はないか。100点とれなくても良い、80点でよいから、簡単な解決策はないか。だれでも考えそうな方法では、答えが出せないのだから、全く違うアイディアはないか。一生懸命考えると、ハッとヒントが頭の中に浮かぶものです。
まず、私(TPICS研究所二ノ宮所長)の解決策のポイントをご説明します。
現場は生きています。時々刻々変化する状況をシステムに取り込み、その中で各工程の平準化され整合性を持った計画をリアルタイムに計算し、指示するのは非常に難しいです。逆に、現場の方は、とにかく「今日、何をどれだけやれば良いか」が判れば良いわけです。なにも“箸の上げ下ろし”を決めてくれと言っているわけではありません。「今日、何をどれだけやれば良いか。今何が出来るのか。今日やる仕事の中で出来ないものがあれば、それはなぜ出来ないのか。いつならできそうなのか。そして何を急ぐのか」が分かればいいのです。欲しい情報を提供しさえすれば、あとはその時その時の状況で判断してくれます。ここまで考えが整理できれば、あとは簡単です。TPiCSには着手信号機オプションがあります。そもそも着手信号機は、「今日、何をやれば良いか。今何が出来るのか。今日やる仕事の中で、出来ないものがあれば、それはなぜ出来ないのか。いつならできそうなのか。そして何を急ぐのか」の情報を明示する為のものです。今の着手信号機に無いのは「今日やらなくてはならない生産レベル(ノルマ)を明示する機能」だけです。
では、どうやって生産レベルを計算し表示するかの説明に移ります。

平準化できていない生産計画を平準化したとすれば、平均値の作業時間になる筈です。生産する順序があれば、平準化すると、その順序のまま計画日がずれることが望ましい訳です。この平均値を生産レベルと考え、生産レベルに達する作業を、優先順位の順に、かつ着手可能な作業だけを選択すれば、それがノルマになります。これをリアルタイムに現場に指示できれば、目的が達成されることが分かります。
(上図では期間内の生産量は縦軸(作業量)と横軸(時間)の曲線の中の面積です。生産計画担当からは点線(B-C縦線)の部分までの生産指図がでています。しかし、現場としては、明らかに本日の作業としては「不満」です、また、数日後には大きな作業量の生産指図(P点)が来て残業する事になるかもしれません。そこで、ある期間の作業の平準化を目論むわけです。この場合、「平均化する期間」(上図青い矢印)内の生産量合計(面積)をその期間で割って、「平均値」を計算します。そうすると、この現場での「生産レベル」は、ABCDの長方形の面積に相当します、この値を「作業量曲線」に合わせたのが、E点(作業指示をする1日)で当初の生産計画より少し多く生産する事になります)
向こう何日間の平均値を取るかは、ユーザーにより異なります。私は、今の時代、一週間サイクルが適当だと思いますが「組合との関係で、一ヶ月間は平準化したい」 というユーザーもあるかもしれません。
(以下はTPICSをお持ちの方以外はピンとこないかもしれません)
[システム環境設定]-[業務処理方法]-[着手信号機]の「製造担当ごとの生産レベル集計期間」で、平準化期間を設定できるようにしました。
そこで、以降は一週間サイクルで生産レベルを決定する運用を前提にして説明します。

- 現場の要所要所にパソコンを置き、TPiCSの信号機を使えるようにします。信号機の画面の中には、各現場のオーダーリリースされた生産指示データが表示されます。(画面上には生産計画で当該部門に指図された、製造指図データが表示されます。さらに、その状態が計画日を中心に、遅れは「赤」進みは「青」など色別表示されます。また、それぞれの前工程の実績入力の状態で「○」「×」式で着手可能かどうかが表示されます。)
- 事務所で、毎週金曜日に、現在の生産計画から、来週の作業量の平均値を計算します。
- 各現場の信号機の画面で、[仮数]ボタンにより、生産レベルに見合う分、作業指示データの仮数フィールドに生産数量が書き込まれます。(仮数ボタンを押す事で上記「製造担当ごとの生産レベル集計期間」で設定された期間内の製造指図数を積み上げ、その後1日ごとの平均数量を算出します。)
- 仮数には、前工程が途中までしか終わっていない、あるいは全部品が揃っていないときは、生産可能な数量が書き込まれます。
- また、午前中の仕事を終え、午後になってから、もう一度[仮数]ボタンをクリックすると、午前中に終えた仕事の分は差し引いて、残りの生産レベルに相当する生産数だけが仮数に書き込まれます。(前工程や原材料・部品の入庫が1日に複数回あるときは、その時々の実績数を元に計算されます。)
- 仮数を埋める順序は表示する順序に従いますが、表示順を自由に決めることが出来ます。そして信号機は、ソートするキーの値を後工程が操作することも出来ます。(後工程から未完の前工程に伝言を送る機能)
- 昨日以前の仕事で、残っているものがあれば、赤色表示され、明日以降の仕事は紺色表示されます。(赤色表示の作業は優先度が高いことになります)
- さらにこの機能は、Ver3.0で追加された「払出し管理」の機能と連動しますから、現場に払出しされた部品の数を元に、着手可能数を計算することが出来ます。
生産レベルの集計方法に関しもう少し、説明を加えます。
- 生産レベルは、現在の生産計画から計算します。在籍する作業人員から計算するのではなく、必要とされる生産計画から計算します。もし、人員能力が不足するなら、他の部署に応援を頼みます。それが出来なければ、生産計画を修正します。つまり、来週の計画から、翌々週の計画へ移動します。後ろにずらすことが出来ないなら、残業をするか、徹夜で生産するしかありません。
- 逆に、仕事が少ない場合は、今流の考え方は「注文が無いのだから、無駄なものを作ってもしょうがない」です。他の部署に応援に出るとか、機械や設備の整備をするなど となりますが、現実的にはそうもいかないと考えるなら、集計した生産レベルを調整し、かさ上げします。これは誰かが意志を持ってやらなければならない仕事です。
- 今週の生産が既に遅れている場合。例えば、金曜日の時点で、本日中に挽回できない遅れがあれば、来週の生産レベルに挽回代(しろ)を用意しなければなりません。集計した来週の作業時間は、製造担当マスターの中に書き込まれますが、直ぐ隣に今週の作業時間と本日の残りの作業時間が表示されるので、残りの作業時間が大きければ来週の作業時間を少し大きくしておかなければなりません。

この仕組みをご理解頂くと、元々の生産計画が平準化されていないと、結果として遅れ進みが発生するのが分かります。平準化の誤差も、遅れ進みも、0にすることは出来ません。ようは、遅れ進みの許容限度と平準化の度合いのバランスです。
以上。(一部省略してあります)また、原本はティーピクス研究所のホームページ( http://www.tpics.co.jp)からダウンロードできますのでご覧下さい。
※文中のTPiCSとは、TPiCS-X(正式名称)のことを指します。




